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藍染めの甕

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昔ながらの長屋、扉をくぐると奥から光がこぼれ風が吹き抜ける。吸い込まれるような不思議な魅力があるこの場所は、高松市で200年以上続く染物屋・大川原染色本舗です。
先日、藍染の甕を見せてもらうために伺ってきました。

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長屋の奥、中庭の土の中に大きな大谷焼きが3つ埋められていました。地中に埋められているのは、温度を一定保つため。暑すぎても、寒すぎても綺麗な青色がでないといいます。甕の中の微生物の力を借りて染め上げる藍染めは、甕を管理するのも一筋縄ではいきません。冬は甕近くに埋められた火壷に炭を入れて温度を保つのだそうです。藍は生きているので、調子がいいときもあれば、元気が無いときもあって、そんな時は、しばらくのあいだ休ませてあげるのだそうです。美しい藍色を出すためには、根気よく愛情を注がないといけないんですね。


甕の中の自然がつくりだす藍は、ちょっと変わっています。泡は青色に見えるけれど、液は茶色。染物を藍液につけ、それが空気に触れることではじめて藍色に変化していきます。つけては干すを繰り返し、いくつもの異なる青を表現していくのです。日本人は古来より、繊細な色の世界を見出し、「甕のぞき(染めはじめの薄い青)」「あさぎ」「はなだ」「かちいろ」など、それぞれの青に名前までつけ愛してきました。本当に日本人独特の感性だなぁと感じます。また、藍の華が浮かんだ甕からは、独特な発酵の香りがします。藍は、味噌や酒などと同じく、日本の伝統技術が生み出す発酵の文化でもあるんです。

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藍甕の傍に、深い紺色に染められた仕事半纏が干されていました。大工さんが棟上に着用するものなんだそうです。昔は、祭りや祝いの席で着用する正装にも藍が用いられたようです。冬は着物、夏は浴衣、仕事半纏や野良着など、士農工商身分を問わず日本の暮らしに彩りを添えてきたんですね。防虫効果もあり、からだを冷やさない特徴がある藍は、奥の人に重宝されてきたんですね。昔は町中が、藍を着る人で溢れていたそうです。この風景を見たイギリス人が「ジャパンブルー」と言ったとか。

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藍染といえば、阿波藍が名高く、徳島が一大産地でもありますが、大川原さんは、藍を育てるところから手掛けています。藍草を7月に刈り取り、乾燥させて「すくも」をつくり、藍を立て、布や糸を染め上げます。まさに昔ながらの本藍です。讃岐藍は、発色が良く鮮やかな青色を醸し出してくれるそうです。 

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こちらは明治時代の藍染の見本帳です。疎開の際に藍甕の下に隠しておいたもので高松空襲で建物は焼失したものの、この見本帳だけが戦火を免れ奇跡的に残されたそうです。
明治時代のものだというのに、藍で染められた生地は、虫もついておらず、今なお鮮やかな色を保っていました。織ではなく、染の技術で細やかな柄を表現したもので、現在でも粋に感じるデザインです。こんな美しい職人技が当たり前のように溢れていたとは、昔から日本人は良いものづくりへのこだわりを大切にしていたのだと感じました。
ここには、職人の想像力や技が大切に受け継がれ、残されていました。

5月19日~21日までサンメッセで開催されている『家具と漆器フェア』にて、大川原さんも手掛けられている「匙工藝」が展示されています。ぜひ一さじの上に表現された讃岐の手しごご覧になって下さい。

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